
「刻み食ってもう時代遅れなの?」
大量調理の伊達メガネです。そんな声が、病院や福祉施設の現場でちらほら聞こえてくるようになりました。
刻み食は、これまで食べやすくて安心な食形態として長く親しまれてきましたが、最近では、
「リスクがある」
「もう使っていない」
という話も出てきています。
今回は、現場歴20年以上の給食調理員の目線で、刻み食のメリット・デメリットから、なぜ廃止の流れが進んでいるのか、そして今後どう対応すべきかまでを解説していきます。
また、現場でよくあるモヤモヤや困りごとにも触れつつ、現実的な対策もお伝えできたらと思います!
刻み食ってどんな食事?実は「わかってるようでわかってない」ことが多いかも…
まずは「刻み食ってそもそも何?」という基本的なところからおさらいしましょう。
施設や給食現場では当たり前に出されてきた刻み食ですが、近年は、
「本当にそれでいいの?」
という見直しの声も高まっています。
「刻み食とは?」
という疑問に納得してもらえるよう歴史的な背景やメリット・デメリットを包み隠さず紹介します。
刻み食とは?現場で長年使われてきた理由と課題点
刻み食とは、かたいものを噛む力が弱くなってしまった方や、飲み込む力(嚥下力)が落ちてきた方に向けて、食材を細かく刻んだ食事のことです。
おかゆややわらかい煮物などと一緒に、「刻んだおかず」が出されるのを見たことがある方も多いと思います。
どうして刻み食が広まったの?
もともとは病院や高齢者施設などで、「食べやすさ」を重視して導入されたのがはじまりです。
たとえば…
- 入れ歯で噛めない人
- 脳卒中後で口の動きがうまくいかない人
- 食欲はあるけど、食べ物がのどにつまるのが怖い人
こうした人たちが、少しでも「安全に美味しくごはんを食べられるように」という気持ちから刻み食が使われてきました。
刻み食のメリット
- 食材を刻むことで、噛む力が弱くても食べられる
- 見た目がある程度残るので、食欲を引き出しやすい
- 提供までの調理工程が比較的シンプル
これだけ見ると「いいこと尽くし」に見えますよね。
でも…実は課題も多い
刻み食にはこんな見えにくいリスクもあります。
| 問題点 | 内容 |
|---|---|
| 食べ物がバラバラ | 刻んだ食材は口の中でまとまりにくく、誤嚥しやすい |
| 水分がにじみ出る | 刻むことで食材の水分が出て、ベチャっとした見た目に |
| 見た目が変わる | 本来の料理の形が崩れて、食欲をそそらないことも |
とくに、誤嚥性肺炎のリスクは、現場でも深刻に受け止められています。
最近では、
「刻み食って本当に安全なの?」
と疑問視する声も増えています。
そこで、刻み食が「なぜ廃止の方向に向かっているのか?」について、現場の変化や国の流れも含めて、次の章で解説していきます!
刻み食が「当たり前」じゃなくなってきた?現場の変化と国の方針とは
「昔からやってることだから…」
と、深く考えずに続けてきた刻み食。
でも最近は、
「刻み食をやめよう」
「代わりの食形態に変えよう」
という施設も増えてきました。
なぜ今、刻み食の廃止が話題になっているのか。
そこには、国の方針の変化や現場で起きている問題が関係しているんです。
なぜ刻み食が廃止されつつあるのか?現場の変化と国の方針
刻み食が使われなくなってきている一番の理由。
それは、安全性に疑問があるという声が強くなっているからです。
問題視されているのは「誤嚥性肺炎」
- 刻んだ食材がバラバラになって、口の中でうまくまとまらない
- 飲み込むときに気管に入ってしまい、誤嚥(ごえん)につながる
- 結果として、「誤嚥性肺炎」のリスクが上がってしまう
刻み食は見た目こそ普通の食事に近く、本人にも食べてる感が出やすいんですが、実はかなり嚥下に注意が必要な食形態なんです。
様々な現場で「刻み食は安全とは言えない」と指摘
介護食や病院食の世界では、ユニバーサルデザインフード(UDF)や嚥下調整食といった、より安全性を重視した食形態の導入が進んでいます。
これにより、「刻み食は廃止すべきでは?」という流れが現場にも広がってきているわけです。
刻み食の廃止についての現場対応の資料がありますのでリンクを貼っておきます。
日本栄養士会「身体障害者施設における刻み食の廃止と”形そのままソフト食”導入の効果」
とろみ付きやペースト状など、代替手段に注目が集まる
刻み食の代わりに増えてきたのが、次のような加工方法です。
- 食材をペースト状にして飲み込みやすくする
- ソフト食の導入(見た目も工夫して食欲を引き出す)
- とろみをつけて、食塊を形成しやすくする
これらの方法は、見た目は多少崩れても安全性が高いことが評価されて導入が広まっています。
ちなみに少し前から、刻み食を「包丁や手作業」でやるのではなく、フードプロセッサーなどを使って効率よく加工する施設も増えてきています。
包丁や手作業の方が見た目がキレイに提供できる場合もありますが、交差汚染や2時間前喫食など安全面や衛生管理を考えた時にフードプロセッサーを使わないという選択肢はないと考えています。
機械を上手に使えば、安全性だけでなく現場の負担もぐっと減らせます。
次の章では、「でも実際、現場で刻み食を作るのって本当に大変…!」というリアルな悩みに焦点を当てて、調理員が感じている限界についてお話しします。
「刻み食、毎日作るのってほんと大変…」現場で起きている3つの限界とは?
刻み食は、たしかに利用者さんにとってはやさしいごはんかもしれません。
でも実際に作っている現場では、
「これもう無理…」
と感じている調理員がたくさんいます。
現場で感じるリアルな限界と課題について、3つの視点からまとめていきます。
刻み食の作り方はもう限界?現場で起きている3つの悩み
毎日の給食づくりや施設での食事提供で、刻み食を担当している人なら誰もが感じていること――それは「刻み食って、思ってるよりもめちゃくちゃ手間がかかる!」という現実です。
手作業で刻むのがツラい!手間・ムラ・時間がかかりすぎる
- 包丁で何十人分ものおかずを刻むのは、本当に大変
- 1品ずつ、刻む時間を考慮して段取りを組む必要がある
- 大量に刻むと「粒の大きさがバラバラ」になりがち
とくに根菜類や繊維質の多い食材は、刻んでもすぐバラけたり水分がにじみ出たりして、形が崩れやすい。
それを一食分ずつまとめて提供するのは、思っている以上にハードです。
食感や水分で「まとまりにくくなる」=誤嚥リスクが上がる
- 食材がパサつく or 逆に水っぽくなる
- 口の中でまとまりづらく、飲み込みづらい
- 噛む力が弱い人ほど「飲み込み途中でつまる」ことがある
つまり、本来は安全のために刻んだはずが、逆に危険な形態になってしまうこともあるんです。
これでは調理員としても不安になりますよね。
人手不足の中で、これ以上ムリ!調理現場にかかる負担が重すぎる
最近では、厨房の人員が足りていない現場がほとんど。
そんな中で、刻み食という手間のかかる調理法を続けるのは、かなりのプレッシャーです。
- 「とにかく時間との勝負」
- 「刻んでる間に他の調理が遅れる」
- 「できるだけ時短したいけど、手を抜けない」
こうした葛藤が、日々の中で積もっていくんですよね…。
そんな現場の声を受けて、「フードプロセッサーを使って刻み食の作業を効率化しよう!」という流れも出てきています。
刻む・すりつぶす・混ぜるなどの機能を兼ね備えた高性能なモデルもあり作業効率を保ちながら、粒の均一性や衛生面もアップできます。
「どんなフードプロセッサーがいいの?」と気になった方は、こちらの記事(フードプロセッサーってどれがいい?)もぜひ参考にしてみてくださいね。
「とろみ付きにすれば安全」って本当?知らずに使うと逆効果になることも…
刻み食の誤嚥リスクを減らす方法として、よく使われているのが「とろみ付き」加工。
でも、「とりあえず混ぜときゃ安全でしょ?」と安易に使っている人は要注意!
正しい知識がないまま使うと、逆に誤嚥のリスクを高めてしまう可能性もあるんです。
とろみ付きの本当の安全性と注意点を解説します。
刻み食+とろみ付きは安全?誤嚥予防のための正しい知識
最近の給食現場や介護施設では、刻み食に「とろみ」を加えて提供するケースが増えています。
とろみがあることで、食材がバラバラになりにくくなり、口の中でまとまりやすくなる(=食塊ができやすい)からです。
でも、「ただ混ぜればいい」というものではないんです…。
とろみ付きのメリットとは?
とろみには、次のような効果が期待できます。
- ✔ 食材がまとまりやすくなり、飲み込みやすくなる
- ✔ 気管に入りにくくなり、誤嚥の予防になる
- ✔ パサついた食材でも、口当たりが良くなる
特にミキサー食やきざみ食など、もともとバラつきがあるものをまとめるには効果的な手法ですね。
でも実は「混ぜ方」が超重要!
- とろみ剤を入れるタイミングや量が適当だと、粘度が安定しない
- 食材によっては、とろみがうまくつかないこともある
- とろみのダマができると、逆に飲み込みにくくなる
つまり、「とろみを入れれば安心!」と思っていると、思わぬ事故を招くリスクがあるんです。
実は「とろみ」にも分類と基準がある
ご存知ですか?
とろみには、ちゃんとした分類・基準があるってことを。
ただこれは食事ではなく液体(お茶や味噌汁)における分類です。
ですが、食事に混ぜるさいに食べる人の状態に合わせて「とろみ」をつける必要があります。
「学会分類2021(日本摂食嚥下リハビリテーション学会)」では、とろみを以下のように分けています。
嚥下調整食分類2021における「とろみ」の3分類(液体のとろみ)
| 分類名 | 特徴 | 観察の目安 |
|---|---|---|
| 薄いとろみ | さらっとしていて、スプーンからすぐに流れ落ちる | とろみのあるお茶や薄いスープ程度 |
| 中間のとろみ | スプーンを傾けるとゆっくり流れ落ちる | スプーンで持ち上げると、とろりと落ちる |
| 濃いとろみ | スプーンを傾けてもすぐには落ちず、スプーンを振るようにして落ちる | もったりしていて、しっかりとした粘度 |
このように、「なんとなくとろみ」「目分量で調整」ではダメ。
正しい食形態の分類を理解して、対象者に合わせた調整をすることが何より大切です。
刻み食がうまくいっていない現場は、「そもそも食形態への考え方が間違っている」というケースもあります。
そういうときは、一度こちらの記事(食形態の分類や特徴)を読んでおくのがオススメ。
刻み食=悪ではない。でもアップデートが必要な時代へ
ここまで読んで、「刻み食ってダメなの?」と思った方もいるかもしれません。
でも、決してそうではありません。
刻み食は、長年多くの人を支えてきた大切な食形態。
ただし今は、「安全・効率・衛生」の観点から、ただ刻むだけでは通用しない時代になっているんです。
最後に、刻み食をどう捉え直すべきか、そして現場でどんな工夫ができるのかを一緒に考えてみましょう。
【まとめ】刻み食は「廃止すべき」ではなく「進化すべき」食形態
刻み食にはたしかにリスクもあります。
でも、それを理由に「全部ダメ」とするのは、少し極端です。
大切なのは、状況に合ったかたちで進化させていくことです。
刻み食が効果的なケースもある
- 歯ぐきで噛む力はあるが、大きな塊は飲み込みづらい人
- 食事の見た目を楽しみたい人(認知症の予防効果など)
- 完全なミキサー食やペースト食を嫌がる人
こうした方には、安全性を確保しつつ「刻む」ことが必要な場合もあります。
だからこそ、廃止ではなく進化という視点が大切なんです。
現場では「便利よりも安全」が求められている
今までは、「時間がないから刻んで出す」「とりあえず細かくしておけばOK」という場面もありました。
でもこれからは、
「どうすれば誤嚥を防げるか」
「利用者の尊厳を保てるか」
という本当の意味でのやさしさが問われる時代です。
そのためには、次のような工夫が現場に求められます。
✅ 食材の状態や個々の嚥下レベルをしっかり観察
✅ 食形態に合った加工法を選ぶ
✅ 衛生的・効率的に刻むための機器の導入を検討
たとえば、「フードプロセッサー」を使うことで、刻み作業の手間・ムラ・安全性の問題を一気に解決できます。
気になる方は、こちらの記事(フードプロセッサーってどれがいい?)で詳しくチェックしてみてください。
また、「食形態の分類」についての理解を深めることで「正しい形態で安全に提供する」ための判断ができるようになります。
具体的な分類や調整の仕方については、こちらの記事(食形態の分類や特徴)を参考にしてみてくださいね。
給食の現場こそ「食のプロ」としてアップデートを!
最後にひとつ、現場の調理員として思うことがあります。
刻み食を含め、どんな食形態であれ――「ただ作るだけ」から「より良く届ける」へ、意識を変えていくことが大事なんです。
刻み食は廃止すべきではなく「より安全で快適なかたちにアップデートするチャンス」です。
私たち現場の調理員が知識と技術を持ち続けることで、これからも「安心して食べられる食事」を届けていきましょう!











