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食形態の分類や特徴と問題点について「病院や福祉施設の食事」

こんにちは「大量調理の伊達メガネ」です。今回は食形態の分類についてお伝えします。

学校給食の大量調理の食形態は一つです。

ですが、病院や福祉施設などの給食の大量調理では食べる人の状態で、様々な食形態の食事を提供しています。

食形態って、あまり聞き慣れない言葉かもしれませんが、病院や福祉施設ではとても重要なものなんです。

そしてこの食形態の分類については大きな問題もあります。

この記事では、食形態の基本から具体的な分類と実際の現場の取り組みを交えてお伝えします。

食形態の基本と重要性

給食調理員が作業しているイメージ

まず、「食形態」って何?って思いますよね。

簡単に言うと、食形態とは「食べ物の形状や食べやすさ」のことを指します。

これは、食べる人の健康状態や食べる力に合わせて食べ物の形を調整することなんです。

例えば、高齢者や病気の方など普通の食事が難しい方にとっては、食形態を変えることで食事を楽しむことができ栄養もきちんと取れるようになります。

食べる人の状態は様々なので食形態の分類は多数あります。

もし、食べる人の状態にあっていない食形態で食事を提供してしまうと、誤嚥や食事への不信感に繋がります。

適切な食形態で提供する事はとても大切な事なんです。

なので、病院や福祉施設での厨房での作業は、切り込みや調理に洗浄などに加えて食事の加工が加わります。

また、病院では食べる人の健康状態によって栄養がコントロールされた食事を提供しています。

それについてはまた別の機会にて詳しく紹介します。

食形態の分類について

まずは食形態の分類についてです。

食形態の分類は大きく分けて5つのカテゴリーがあります。ただ、この食形態の分類は考え方で変わってきてます。

この考え方で分類が変わってくるのが問題なんですが、それについては後から説明します。

とりあえず今回の食形態の分類は「大量調理の伊達メガネ」が実際に幾つかの職場を経験した上で分類してあります。

分類された食形態には特徴があり、利用者の状態に適した内容になっています。

それぞれの食形態についてお伝えします。

常食

まずは「常食」です。

これは、私たちが普段食べている普通の食事のことです。

噛む力や飲み込む力がしっかりしている人向けで特に制限はありません。

ご飯、肉、魚、野菜など、普通に調理された食べ物がこれに当たります。

軟菜食

次に「軟菜食」です。

これは、常食よりも少し柔らかく調理された食事です。

ご飯も普通に炊くより少し多めの水分量で炊いて柔らかくして提供します。

野菜や肉も柔らかく煮込まれています。逆に言うと硬い食材は使用しません。

ごぼうや筍などは使用しません。肉や魚でも柔らかいものを使用します。

歯が弱くなった方や、消化があまり得意でない方にぴったりです。

きざみ食

「きざみ食」は、その名の通り食べ物を細かく刻んだ食事です。

噛む力が弱い方でも食べやすいように野菜や肉を細かく刻んであります。

ただ、このきざみ食が先ほどお伝えした食形態の分類で問題になってきます。簡単に言うときざみのカットサイズが様々であるという事です。

カットサイズが様々になると、なぜ問題になるかは後からお伝えします。

ミキサー食

「ミキサー食」は、さらに一歩進んで調理した食事をミキサーにかけてペースト状にして提供します。

噛む力がほとんどない方や飲み込む力が弱い方でも安全に食べることができます。

見た目はちょっと驚くかもしれませんが、普通の食事をミキサーにかけるので味は普通の食事と一緒です。

献立の内容によっては食材ごとにミキサーにかけて提供する場合もあります。

流動食

「流動食」は、スープやジュースのような液体状の食事です。

これはミキサー食とは違い水分のみの食事です。

例えば野菜スープを調理して具を取り除いたスープだけを提供します。

ご飯はお粥の重湯だけです。

手術後や病気で固形物が食べられない方に適しています。

ソフト食

最後に「ソフト食」です。

これは、軟飯食と似ていますが、さらに食べやすさに特化しています。

ムース状やプリン状の食べ物が多く、見た目もカラフルで食欲をそそります。

食べるのが難しい方でも楽しめるように工夫されています。

既製品を使うだけでなく食材を加工してソフト食にする場合もあります。

とろみの有無

最後にこれらの食形態の分類に加えて「とろみ」の有無があります。

きざみ食など食事の加工に加えて、別に出汁などを作ってとろみを付けたものをかけて提供します。

とろみのあんは片栗粉でつける場合やとろみ剤を使用して作ります。

飲み込む力が弱って誤嚥の恐れのある人へ提供しています。

食形態の分類の問題点

給食調理員が腕を組んで意見しているイメージ

先ほど、きざみ食の紹介でお伝えした通り食形態の分類には大きな問題点があります。

それは施設によって食形態を分類した時の名称と内容が一致しないんです。

特にきざみ食です。どれぐらい刻みますか?

これは施設によっては一口大のサイズであったり、包丁で叩いたりフードプロセッサーで細くしていたりと形状が全く異なるんです。

施設によっては、食形態の分類を「一口大」と「きざみ食」で分ける場合もあります。

そして一口大に分類された食事は、カットしても見た目が損なわないようにします。

さらに、きざみ食も多数に分類されて「粗刻み」「中刻み」「極刻み」「超刻み」など様々な形状で対応する施設もありました。

常食の内容だって違います。

特養などの施設は常食=軟菜食になっている施設も多くありました。それらの施設では常食を食べる事ができる人が少なかったので対応していないんです。

それぞれの施設独自の考えで名称や取り組み方が決まっているんです。

ある程度は、施設独自の考えを利用者さんの状態によって取り入れるのは必要だと思います。

ですが「給食の大量調理」で出来る範囲であるかどうかという事です。つまり大量調理マニュアルを守れているかどうかという事です。

食形態の分類を見ただけで、「ここは何も考えていない」って事がわかります。

例えば、先ほどのきざみ食の食形態がめちゃくちゃ多い施設。給食の大量調理ですよ。大量調理施設衛生管理マニュアルのルールを考えると対応できないですよ。(というか度外視していました)

そんなに人件費をかけているんですか?安心安全はどこいった?

利用者さんのため?それは大量調理マニュアルのルールを破る理由になるんですか?

それに利用者さんが病院や家に帰ったら?それを家族の方や他の施設が対応できるんですか?

一方で地域内で連携して食形態の分類を統一しているとこもあります。

食形態の分類が統一されていると、病院を変わる場合や特養への入所に自宅へ帰ることなどを考慮すると利用者さんにとっても働いている人にとっても、そして家族の方にとっても助かるんです。

もちろんケースバイケースもあるでしょう。食形態の分類を多くすることで助かっている人もいるので一概に悪いこととも言えないかもしれないです。

ですが福祉や介護に国がもっと協力しなくては対応できないんです。

それだけの投資をしてないのに、それを働いている人たちに無茶させるのは変な話なんです。

それから、もう一つ問題点があります。それは衛生面での問題です。

きざみ食やミキサー食は調理後に加工するので菌が付くリスクが上がります。必ず専用の調理器具を用意して対応しましょう。

また温度管理も難しくなります。素早く加工できるよう工夫する必要があります。

数十食、場合によって100食以上の複数品を加工するのに、包丁で作業していては常温で放置する時間が長くなってしまいます。

常温で放置する時間が長くなると食中毒のリスクが上がります。

理想は一品ずつ料理を加工して見た目よく盛り付けることです。ですが、人や設備などと衛生面を考えると選択肢は多くはないです。

少なくとも包丁で一食ずつ加工することだけはやめてくださいね。それは自己満足であって本当に大切なことを「食べる人のためと言って」やらない理由にはならないです。

食形態の作り方と作業の流れ

給食調理員が食形態の作業をしているイメージ

それでは具体的な流れを作業内容とともにお伝えします。

料理は主菜として「魚の塩焼き」にしましょう。

食形態は常食100名、軟菜食50名、きざみ食40名、ミキサー食10名の合計200食とします。

ソフト食や流動食は別の献立であったり既製品を使用するので、また別の機会に説明します。

まず、常食と軟菜食では使用する魚の種類が違いますが、今回は鯖を使用しますので軟菜食も一緒です。鯖は軟菜食でも提供できる食材です。

ですが、同じ食材であっても調理方法を変える場合もあります。そしてきざみ食とミキサー食は軟菜食と同じ食材と調理方法で調理された料理を加工します。

鯖の場合は調理方法を変えているので、常食100匹と軟菜食100匹を別の方法で加熱していきます。

常食はスチコンを使用して180度で10分前後を目安に火を入れていきます。ですが、軟菜食の方はもっと低い温度で加熱します。

なぜなら高温で加熱すると魚が硬くなってしまうからです。とは言っても150度前後で15分ぐらい加熱して様子をみます。

スチコンで加熱するので鉄板に魚を並べますが、加工するきざみ食40名とミキサー食10名の合計50名分はわかるようにしておきます。

具体的な作業内容でいうときざみ食分は鉄板でなく深いホテルパンに人数分を魚が重ならないように入れます。ミキサー食用は人数分だけを鉄板に並べます。

魚を並べる事ができたらスチコンに入れて加熱していきます。

必ず中心温度を測って記録もしましょう。

常食は加熱後は提供まで保温庫で保管します。軟菜食も加熱後に保温庫で保管しますが、きざみ食とミキサー食は加工していきます。

きざみ食は深いホテルパンに入ったままの魚をヘラなどを使ってザクザクと細かくしていきます。ヘラの用途として切り分けることが想定してありますので便利な道具です。

へらとは、薄く扁平になった道具の総称である。スパチュラ、スパチュール 、あるいはスパーテルとも呼ばれる。様々な用途、種類がある。 へらは扁平な板状の道具であるが、粘り気のあるものをかき混ぜたり、またはそれを何かに塗り付けたり、あるいは削り取ったり、場合によっては柔らかい対象を刃のように押し切ったりする機能がある。

魚によっては手袋をはめて手でほぐす場合もありますが、時間がかかってしまうので深いホテルパンのままヘラで押し切るようにします。

深いホテルパンの中で作業するのでまな板や包丁を使うよりも衛生的でかつ素早く細かくできます。

そしてミキサー食はジューサーで出汁などの水分と一緒にかけて細かくします。場合によってはとろみ剤を入れて飲み込みやすくします。

加工後はそれぞれ提供まで保温庫で保管します。

一番重要なのは、長い時間を常温で放置しないようにする事です。

お伝えしたのは主菜だけですが、これに副菜などを加えると3品〜4品の人数分を加工することになります。

まとめ:食形態の分類も組織の取り組み方の一つ

給食調理員が楽しく作業している

食べる人の状態に合わせた食形態で提供することは重要ですが、限られた時間や設備に人件費を考えると出来ることは限られてきます。

結果として取り組み方が似たようになってきます。

または、それだけの人や設備に投資をしている可能性もあります。ですが、ほとんどの場合は多くの投資を出来ないのが現状です。

そうなると、取り組み方が変わっている職場は問題があると考えることも出来ます。

「大量調理の伊達メガネ」は給食の大量調理の職場に起きている多くの問題は、食形態の分類も含めて法人や会社としての取り組み方に大きな問題があると感じています。

結果として苦しむのは働いている人や利用者さんになります。

様々な取り組み方が仕事の「働きやすさ」や「サービスの質」に反映されるんです。

その様な取り組み方が繋がっていき給料にも差が出てきます。(給料が良いから「いい職場」という意味では無いですよ)

皆さんの職場の食形態の分類はどうですか?

「大量調理の伊達メガネ」は何が正しいのか迷いがあります。

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