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リアルな現場の野菜の洗浄と大量調理施設衛生管理マニュアル

おつかれさまです、「大量調理の伊達メガネ」です。

今回は大量調理施設で必ずある作業「野菜の洗浄」について紹介します。

家庭ではどうですかね?

買ってきて冷蔵庫にしまって必要な時に水で洗って切って使うって感じですよね?

家庭によって独自ルールで洗浄をして使用していると思います。

大量調理施設では、日々大量の食事を提供するため野菜を含む全ての食材の安全性がとても重要です。

多くの人が食べるので、問題があった場合の食中毒のリスクの範囲が広いんです。

使用する野菜をしっかり洗浄することで、食中毒のリスクを抑えることにつながります。

野菜は、土や農薬それから細菌など様々な汚染物質にさらされやすいためしっかり洗浄しましょう。

大量調理施設衛生管理マニュアルと野菜の洗浄

大量調理施設衛生管理マニュアルって何?

「大量調理施設衛生管理マニュアル」は、衛生的に食事を提供するためのガイドライン。

これに沿って調理を行うことが、食中毒や衛生事故を防ぐために必要不可欠です。

野菜の洗浄も、このマニュアルに基づいて行われます。

このマニュアルには、野菜を洗うときの注意点や消毒方法などが詳しく記載されています。

この内容をしっかり守ることで、安心・安全な食事を提供することができるんです。

大量調理マニュアルの野菜の洗浄方法について解説

野菜の洗浄で重要なのが、どのように提供するかです。

つまり野菜を「加熱して提供」するのか「生のままで提供」するかによって対応が違います。

生のまま(加熱なし)で提供する場合に重要なのが殺菌をすることです。

生の食材を提供する時のリスクを無視できなくなり最新版の大量施設衛生管理マニュアルには下記の内容が追記されています。

特に高齢者、若齢者及び抵抗力の弱い者を対象とした食事を提供する施設で、加熱せずに供する場合(表皮を除去する場合を除く。)には、殺菌を行うこと。

大量調理施設衛生管理マニュアル

大量調理施設衛生管理マニュアルには、野菜の洗浄方法についても記載されています。

大量調理施設衛生マニュアルの「必要に応じて次亜塩素酸ナトリウム等で殺菌...」というのが生で提供する時の対応です。

野菜及び果物を加熱せずに供する場合には、流水で十分洗浄し、必要に応じて次亜塩素酸ナトリウム等で殺菌した後、流水で十分すすぎ洗いを行うこと。

大量調理施設衛生管理マニュアル

1 衛生害虫、異物混入、腐敗・異臭等がないか点検する。異常品は返品又は使用禁止とする。

2 各材料ごとに、50g程度ずつ清潔な容器(ビニール袋等)に密封して入れ、-20°C以下で2週間以上保存する。(検食用)

3 専用の清潔な容器に入れ替えるなどして、10°C前後で保存する。(冷凍野菜は-15°C以下)

4 流水で3回以上水洗いする。

5 中性洗剤で洗う。

6 流水で十分すすぎ洗いする。

7 必要に応じて次亜塩素酸ナトリウム等で殺菌した後、流水で十分すすぎ洗いする。

8 水切りする。

9 専用のまな板、包丁でカットする。

10 清潔な容器に入れる。

11 清潔なシートで覆い(容器がふた付きの場合を除く)調理まで30分以上を要する場合には、10°C以下で冷蔵保存する。

大量調理施設衛生管理マニュアル

大量調理施設衛生管理マニュアルに野菜の洗浄方法が明確に記載されているとは言っても、やはり現場ごとで洗う方法は違ってきます。

なぜなら厨房の設備が現場ごとで違うからです。

生の野菜の提供について果物の消毒ではありますが「【大量調理施設衛生管理マニュアルの果物消毒】実際の現場の方法」も参考になると思いますのでご覧ください。

大量調理では野菜の洗浄に中性洗剤を使用

先ほどの大量調理マニュアルに「中性洗剤で洗う」と書かれていますが、これは多くの方にビックリされます。

野菜を洗剤で洗うのは家事に不慣れな人のあるあるの笑い話なんですが、実は野菜を洗剤で洗えないと考えている人の方が非常識だったんです。

ご家庭にある中性洗剤の注意書きを見てください。そこにも使用用途として「野菜・果物・食器・調理用器具」と記載されているんですよ。

非常識なのは逆だったんですね。

何度か大量調理の職場で年配の方が洗剤で洗うことを馬鹿にしているのを見ましたが、それは大量調理施設衛生管理マニュアルを全く見ていない証拠なんですね。

ただ、汚れがひどい場合に中性洗剤を使用して洗うのですが、最近の野菜は綺麗なものが多いので使う頻度は少ないですけどね。

それから次亜塩素酸ナトリウムの扱いも注意が必要です。必ず適切な濃度で使用しましょう。

次亜塩素酸ナトリウム溶液(200mg/lで5分間又は100mg/lで10分間)又はこれと同等の効果を有する亜塩素酸水(きのこ類を除く。)、亜塩素酸ナトリウム溶液(生食用野菜 に限る。)、過酢酸製剤、次亜塩素酸水並びに食品添加物として使用できる有機酸溶液。これらを使用する場合、食品衛生法で規定する「食品、添加物等の規格基準」を遵守すること。

大量調理施設衛生管理マニュアル

次亜塩素酸ナトリウムについては「次亜塩素酸ナトリウムで野菜を洗うのは危険?知っておきたい安全な使い方」でも伝えています。

あと、必ず守って欲しいのが洗浄後の取り扱いです。

調理(加熱)を前提にした食材とは別の器具や保管場所を使用しましょう。包丁、まな板、冷蔵庫などです。

そのまま(加熱なし)で利用者さんに提供することを意識した作業が必要となります。

大量調理で加熱用の野菜の洗浄は?

では、加熱して提供する野菜はどのようにして洗浄するかになるのですが...。

これまでの「大量調理の伊達メガネ」の経験からいうと施設ごとで野菜の洗浄方法が違うんです。

同じ法人内でも施設が違えば野菜洗浄の段取りも違ってました。つまり厨房の設備によって変わってきます。

冒頭で家庭では独自ルールでやっていると言いましたが、大量調理の職場も厨房設備によって洗浄方法が変わってきます。

そして大量調理施設衛生管理マニュアルには加熱時としての明確な記載を見つける事が出来なかったんです。

なので職場によっては加熱して提供する野菜も殺菌を必ずしている場合もあります。

ならば、何が正解かというと...保健所の方の指示に従うというのが正解になります。

野菜洗浄に問題があれば保健所の方から指摘されるので改善するという事です。

これだけだと「じゃあどうするんだ?」となるので、これまで経験したよくある野菜の洗浄方法をお伝えします。

ただ、保健所の方から指摘はされなかったですが、担当する方で変わってきますので参考程度に見てくださいね。

リアルな現場の野菜の洗浄方法

先ほどもお伝えしたとおり、野菜の提供方法で洗浄の仕方は変わってきます。

ここでは加熱を前提にした野菜の洗浄方法をご紹介します。あくまで「大量調理の伊達メガネ」の経験からお伝えしますので、保健所の方から指摘があれば従ってくださいね。

大量調理施設の野菜洗浄手順

野菜の洗浄は、土や汚れに農薬の残留物に細菌などを取り除くためにおこないます。それらを意識した作業が重要となります。

次亜塩素酸ナトリウムなどの洗浄液は使う職場と使わない職場があります。基本的に加熱する事が前提なので洗浄液を使わなくてもよいとは思います。

ただ今回は使った場合の洗浄の流れをお伝えします。

  1. 前準備(納品時の検収)
    洗浄より前工程である納品時に確実に野菜の状態を確認しておく事も重要です。傷んだ野菜が入っていると他の野菜もダメになってしまいます。確実にチェックして問題のある野菜を入れないようにしましょう。
  2. 1回目の洗浄
    水を張ったシンクに野菜を入れます。一番汚れている外側の大きな汚れを落とします。シンクの中でザブザブと汚れを落として水で流しながら野菜をあげます。
  3. 2回目の洗浄
    1回目とは別のシンクに食品用の洗浄液を適切な濃度で用意します。そこに野菜を下処理して入れていきます。例えばキャベツなら半分に切って芯を落とす、大根なら皮剥きや葉の部分を落とし、葉物なら根っこを落として洗浄液の入った水に浸します。その後、流水で洗浄液を落としながら野菜をあげます。
    ※使用する洗浄液によって浸す時間は違ってきますが、10分ほどつけることが多かったです。
  4. 3回目の洗浄
    洗浄液につけた野菜を再度水を張ったシンクに入れます。そこでもシンク内でザブザブと野菜を洗って水で洗い流しながら野菜を引き上げます。残留している洗浄液や野菜の内側に入った汚れを意識しましょう。

カットしてからしっかり洗うことも重要ですが、野菜の切りくずなのか汚れなのか異物なのかわからない状態になっている事が多いです。

何も処理されていない野菜は、その前の状態をどうするかがとても重要です。

ここまで洗浄してから野菜のカット作業に入っていきます。フードスライサーや包丁による手切りなど作業内容によって適切に野菜を処理していきます。

大量調理での包丁技術について知りたい方は「給食で使う野菜の切り込み!大量調理に包丁の技術は必要ないの?」で紹介していますのでご覧ください。

野菜の洗浄不足による食中毒事例

生野菜の提供がもたらすリスクというのは、想像しているより食中毒のリスクがあります。

家庭では肉や魚などは加熱をしっかりしないと危ないとは感じていると思います。ですが、野菜や果物は基本的に生のまま食べれるので問題ないと考えがち。

ですが、その食材に菌やウイルスが付着している可能性は無視できないんです。

結果として洗浄不足による食中毒というのは毎年のように報告されています。

キャベツによる腸管出血性大腸菌(O157)感染

  • 年: 2009年
  • 場所: 北海道
  • 概要: キャベツがO157に汚染されており調理後に感染が拡大。野菜の洗浄と取り扱いに問題がありました。
  • 感染ルート: 調理場での洗浄不十分によるO157汚染。

きゅうりによる腸管出血性大腸菌(O157)感染

  • 年: 2011年
  • 場所: 埼玉県
  • 概要: 生のきゅうりが原因で小学校で多数の児童が感染。調理場での衛生管理不足が指摘されました。
  • 感染ルート: 調理場での洗浄不十分によるO157汚染。

大根によるサルモネラ感染

  • 年: 2015年
  • 場所: 福岡県
  • 概要: 生の大根を食べた後にサルモネラに感染した事例。調理前の洗浄が不十分だったと推定されました。
  • 感染ルート: 調理前の洗浄不十分によるサルモネラ汚染。

生野菜の提供を見直し

生の野菜による食中毒のリスクを無視できなくなった為、サラダや和え物などに使われる野菜もボイル(加熱)した後に流水やブラストタイラー(急速冷却機)で冷まして使用しています。

「大量調理の伊達メガネ」が所属していた職場も昔は生で提供していたのが今では加熱が必須となりました。

それから知り合いの職場も含めて加熱しないで提供しているという話は聞いたことがないです。

もしかしたら「大量調理の伊達メガネ」が知らない職場ではあるかもしれませんが、多くの施設では加熱して提供しています。

和え物やサラダの加熱や冷却に関しては「大量調理の和え物を成功させるための温度管理ガイド」にて詳しく説明してありますのでご覧ください。

まとめ:野菜の洗浄は基本が大切

大量調理施設における野菜の取り扱いは食品の安全を確保する上でとても重要です。

しっかりと野菜を洗浄することは食中毒のリスクを最小限に抑え利用者に安全な食事を提供することにつながります。

また、野菜の取り扱いというか食材の取り扱いには注意点があります。

  • 野菜を洗浄する前後で手を洗うこと。
  • 洗浄用の器具と調理器具を区別すること。
  • 野菜と調理済み食品や生の肉とは別に取り扱い別の器具を使用すること。
  • 使用する水は飲料可能な清潔な水を用いること。

これらの基本的ですが重要なポイントを守ることで、野菜を介した食中毒のリスクを大幅に減らすことができます。

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