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大量調理と家庭料理の違い!給食は「安心、安全」が第一なのです。

大量調理と家庭料理の違いってなんだと思います?

家庭料理との大きな違いは「大量に調理する」ことです(笑)

そんなの当たり前だって?そうなんです、当たり前なんです。

大量の料理を調理するという事は、たくさんの人が食べるということなんです。

大量の料理を調理するという事は、たくさんの時間が必要なんです

食材を下処理して調理をして盛り付けて運ぶ、家庭料理とは違って食べるまでに時間がかかるのです。

たくさんの人が食べる料理に問題があった場合はどうなりますか?100人に提供していたら?

大量に調理するというのは、多くの人の健康に関わる仕事なのです。だから「安心、安全」をしっかり確認しながら調理して保管しなければならないのです。

はじめに

大量調理に関わらず料理は「安全、安心」が最も重要ですが、大量調理の場合は多くの人が食べるので、多くの人へ影響します。

つまりリスクの範囲が広いのです。

そのため、大量調理は普通の飲食よりも厳格なルール「大量調理施設衛生管理マニュアル」をもとに料理を提供しています。

大量調理の「安心と安全」

どうやって安心と安全を守っているか?しっかり火を通せばいいのではないのです。

「安心、安全」を守るためには、「誰がどこで何をどうやっているのか?」の衛生面を確認しなければならないのです。

詳しいことは、厚生労働省にある「大量調理衛生管理マニュアル」で確認できますので、ここではよくある現場の対応を紹介します。

衛生管理チェックシート

いくら食材や調理器具に気をつけていても調理従事者に問題があれば意味がありません。

必ず体調や服装などに問題がないか確認して、その結果を「衛生管理チェックシート」に記載します。これを記入してから作業場に入ります。

もし、問題があれば対処してから仕事に入ります。手に傷がある場合は専用の手袋をつけたり、作業着を変えたりなどです。

状況によっては帰ってもらう時もありますね。「調理の仕事は出来ないよね」ってこともあります。

特に腹痛の時ですね。

冬はこわいですよ。ノロウイルスは少ないウイルスで発症するので、もし提供する食事や食器に付いたら大ごとです。

必ず衛生管理チェックをして対応します。「衛生管理チェックシート」は1年間保管します。

食材の確認と管理 原材料の保管

野菜や魚、肉に卵、それから冷凍食品などを様々な食材が納品されます。これらを納品時に必ず問題がないかを確認します。

野菜は傷みや腐っていることもあるので目視で状態と匂いで確認します。肉や卵も同様です。

冷凍食品は溶けていたり袋が破れていることもあります。必ず立ち合って確認します。

問題があって全てを納品拒否したこともありますよ。

その時は、急遽の献立変更で大変でしたね。既製品の在庫もあったので何とか出来ましたけどね。

多くの人が食べる食事の食材というのもありますが、そもそも健康を害する恐れのあるものは使えないです。

自分一人が食べるものなら「これぐらいならいっか」と言えるものでも「給食の大量調理」として判断するとダメな時はありますよ。業者さんには申し訳ないと思いますが。

それから、納品時の時刻と温度も確認して記録します。また、野菜や肉、卵などは原材料の保管もします。50グラムほどとってビニール袋などに入れて冷凍保管します。

材料の点検もチェックシートに記録して1年保管します。原材料の保管は2週間です。

調理加熱後の中心温度

ほとんど場合は調理時に加熱します。家庭では食材の柔らかさ、肉や魚などは中の状態を見て判断すると思います。

でも、「給食の大量調理」では中心温度計で加熱の状態を見ています。

じゃあ、どこまで温度が上がっていればいいの?って話ですよね。

大量調理施設衛生マニュアルにはこう書かれています。これは「焼き物や揚げ物」についてです。

調理の途中で適当な時間を見はからって食品の中心温度を校正された温度計で3点以上測定し、全ての点において75°C以上に達していた場合には、それぞれの中心温度を記録するとともに、その時点からさらに1分以上加熱を続ける(二枚貝等ノロウイルス汚染のおそれのある食品の場合は85~90°Cで90秒間以上)

大量調理施設衛生管理マニュアルより引用

実際の現場では、特に「肉や魚」に神経を使っています。しっかり測って記録しますね。

焼き物や揚げ物は、状態や方法で加熱にムラができる事もあり「肉や魚」の中心温度が85度以上でOKとする職場が多かったです。もちろんノロウイルス対策のためもあります。

煮物に関しては鍋や釜の中心付近で計測することが多かったです。「食材が小さく」「沸騰させて煮込む」ので全体の中心温度が上がっていれば問題ないのです。

沸騰させるので中心温度で計測すれば100度近くになるでしょう。

ちなみに大量調理衛生管理マニュアルには煮物や炒め物についてはこう書いてあります。

調理の途中で適当な時間を見はからって、最も熱が通りにくい具材を選び、食品の中心温度を校正された温度計で3点以上(煮物の場合は1点以上)測定し、全ての点において75°C以上に達していた場合には、それぞれの中心温度を記録するとともに、その時点からさらに1分以上加熱を続ける(二枚貝等ノロウイルス汚染のおそれのある食品の場合は85~90°Cで90秒間以上)。なお、中心温度を測定できるような具材がない場合には、調理釜の中心付近の温度を3点以上(煮物の場合は1点以上)測定する。

大量調理施設衛生管理マニュアルより引用

食材ごとで測定することは少なかったです。

作業者の経験から判断して測る場合もありましたが、煮物は煮込むので100度近いですし、炒め物は肉などしっかり火を通したい食材から入れるので85度以下であった事は一度もないです。

これらも中心温度も記録をして保管をしています。

当日調理と2時間前喫食

家庭では料理の作り置きは多いと思います。また飲食店も前日の仕込みも珍しくありません。

ですが、給食の大量調理ではNGです。必ず当日に調理して提供します。

大量調理施設衛生マニュアルにはこうあります。

原材料の納入に際しては、缶詰、乾物、調味料等常温保存可能なものを除き、食 肉類、魚介類、野菜類等の生鮮食品については1回で使い切る量を調理当日に仕入 れるようにすること。

大量調理施設衛生管理マニュアルより引用

また、こうも書いてあります。

調理後の食品は、調理終了後から2時間以内に喫食することが望ましい。

大量調理施設衛生管理マニュアルより引用

保健所の方は、当日に調理して提供はもちろんの事、調理終了後(加熱終了後)から2時間以内に提供して食べれるかを確認します。

つまり食事の開始時間に合わせて調理の作業時間が決まっていて、それを確実に実行しているかです。

なぜ「調理終了後から2時間以内に喫食」となっているかを簡単に説明すると、調理終了後から2時間を経過すると菌の増殖による食中毒リスクが高まるからです。

そのため、前日調理や2時間前以上に調理終了するようだと保健所から指導が入ります。

場合によっては営業ストップですよ。気をつけましょう。

提供までの温度管理

調理が終わってから提供までには時間があります。その間の管理にも気を配っています。

大量調理施設衛生管理マニュアルにはこうあります。

調理後直ちに提供される食品以外の食品は、食中毒菌の増殖を抑制するために、10°C以下又は65°C以上で管理することが必要である。

大量調理施設衛生管理マニュアルより引用

温かいものは65℃以上に設定した保温庫で管理します。それ以外の料理は冷蔵庫で管理しています。

適切な温度で管理して運搬の直前に出しています。

食中毒菌の発育至適温度帯は約20°C ~50°Cです。その温度帯である時間を可能な限り短くするよう努めています。

提供前に検食

必ず提供した料理を食べてもらう前に検食をしています。検食は主食も含めて全ての料理を食べます。

ただ、全ての料理は味付けや食材の柔らかさを確認してから調理終了と指定いるので検食で問題があって提供できないとなった事は一度もなかったです。

もちろん提供が出来るかの確認を目的としていますが、次回の献立への工夫にも活かしています。

使用する食材や調味料などを変えることもあります。

また、検食という単語は別の事も意味します。それぞれの料理を50グラムほどを別々に冷凍保管します。

万が一問題が発生した時に検証するためです。2週間の保管義務があります。

まとめ

大量調理は「安心、安全」が第一です。これは「美味しい」よりも大切です。「安全、安心」があって「美味しい」が来るのです。

つまり、「安心、安全」が確認できない状態では、調理をすすめる事ができないのです。

また、手間をかけることで美味しくなる代わりに「安心、安全」のリスクが上がる場合は、その手間をやらないのが正しい選択になるのです。

特に、前日調理を含む前以って調理しておく事は食中毒のリスクが上がります。

大量調理として美味しくできる範囲で仕事をするのです。

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