
暑い季節、厨房はまさに灼熱地獄。
特に給食調理や大量調理の現場では、クーラーなんて効きません。
室温は軽く30℃以上は当たり前で40℃近くになることも、そして、立ちっぱなしで火の前で動き続け…まさに「隠れ戦場」ですよね。
「水分さえ取っていれば大丈夫でしょ?」と思っていた昔の自分にツッコミたくなるぐらい、熱中症対策は甘く見ちゃダメ。
今回は、ベテラン給食調理員の私が何年もかけてたどり着いた「熱中症に効く食べ物ランキング」と、「ちょっと変わった裏ワザ」までぜんぶまとめました!
同じ厨房仲間の命と健康を守るために本気で書きます。
はじめに:厨房はなぜ熱中症リスクが高いのか
暑い夏、厨房で働くみなさんにとって「熱中症」は他人事じゃありませんよね。
実は私も新人の頃、あと一歩で倒れるところでした。
その原因のひとつが、厨房特有の過酷な環境なんです。
厨房の室温、30℃以上は当たり前
給食の大量調理の職場では、大型の釜やオーブン、フライヤーなどがフル稼働。
空調が効いてても、火の前に立つと肌がじりじり…。
体感的には、外よりもキツいです。
特に「朝から火を使いっぱなし」の夏場は、湿度も高く汗も止まりません。
「水分取ってるから大丈夫」…は落とし穴
これ、私も昔はそう思ってました。
でも実際は、水分だけじゃダメなんです。
汗で失われるのは水だけじゃなくて、「塩分」や「ミネラル」も一緒。
これが足りなくなると、体温調整ができなくなって一気に具合が悪くなります。
見逃されがちな積み重ね疲労
厨房での仕事は体力勝負。
その日の疲れが取れないまま翌日を迎える…これ、実はじわじわ体に効いてます。
熱中症の怖さは「いきなり来ること」じゃなくて、「じわじわ体力が削られて、ある日突然ガクンと来ること」なんです。
【ランキング】熱中症対策に効く食べ物ベスト10
熱中症は、水分だけじゃなく「塩分・ミネラル・糖分・たんぱく質」など、体の機能を整える栄養素が不足することで起こることも多いです。
だから、何を食べるかが本当に大事!
ベテラン給食調理員の私が実際に夏の現場で取り入れて「効果を感じた食べ物」を、ランキング形式でお届けします。
調理いらずの即食アイテムも入れてるので、忙しい厨房現場でもマネしやすいですよ!
🥇第1位:梅干し入りおにぎり(クエン酸+塩分)
塩分とクエン酸が一緒に摂れて、しかも腹持ちもいい。これはまさに「熱中症に効く食べ物の王様」です。
クエン酸は疲労回復にも◎。夏の厨房では朝イチからおにぎりを持参し、合間にパクッと食べるのが鉄板ルール!
のりを巻いておけば手も汚れず、塩分補給+エネルギー補給が同時にできます。
🥈第2位:バナナ(カリウム+即エネルギー)
「バナナはスポーツフード」と言われる通り、カリウムが豊富で筋肉の痙攣予防にも効果的。
さらに、糖質もすぐエネルギーに変わるので、厨房でフラッとしそうな時の“即効チャージ”にもってこい。
朝に1本、昼にも1本。袋に入れておけば気軽に持ち歩けて便利!
🥉第3位:味噌汁(水分+塩分を自然に)
「飲む点滴」といっても過言じゃない味噌汁。
しっかり水分が摂れる上に、味噌にはナトリウムやアミノ酸が含まれているので、塩分補給+疲労回復のW効果!
具材に豆腐やわかめを入れれば、さらにバランス◎。夏場は冷やして“冷製みそ汁”にしても意外とイケますよ。
第4位:スイカ(水分+リコピン+癒しの甘さ)
スイカは水分たっぷりで、しかもリコピンやシトルリンという成分が体の熱を下げてくれるんです。
さらに、自然な甘さでリラックス効果もあり、精神的にも癒されます。
厨房の休憩室にカットスイカがあるだけで、職場がパッと明るくなりますよ!
第5位:豆腐・冷ややっこ(たんぱく質+のどごし良し)
暑くて食欲がなくても、冷たい豆腐ならスルッと食べられます。
しかも良質なたんぱく質が摂れるので、体の回復力アップにも。
上に刻みネギやしょうがを乗せれば、さっぱりして栄養バランスもばっちり。
第6位:きゅうりの浅漬け(ナトリウム+水分)
きゅうりは水分が多くて体を冷やしてくれる野菜の代表。
そこに塩をきかせて漬ければ、ナトリウム補給も同時にできます。
朝の仕込み時にパパッと仕込めば、昼には浅漬け完成!夏場の副菜にピッタリ。
第7位:麦茶+塩飴セット(最強の王道コンビ)
厨房でのどが渇いた時は、冷えた麦茶が最高。でも、水分だけでは足りません。
そこで「塩飴」をセットで常備!これだけで塩分と糖分が摂れて、体の中が一気に整います。
熱中症予防食事の基本は「こまめに・ちょっとずつ」補給すること。これがその典型です。
第8位:冷やしトマト(リコピン+ビタミンC)
夏になると、トマトの甘さが際立ちますよね。
冷蔵庫で冷やしてそのまま食べられるのが魅力で、皮をむいておけば手間いらず。
リコピンとビタミンCのダブル効果で抗酸化力もアップ!
第9位:枝豆(ビタミンB1で疲労回復)
枝豆は「豆」なので、たんぱく質もビタミンもたっぷり!
特にビタミンB1は疲労物質を分解してくれる働きがあり、スタミナ切れを防ぎます。
おやつがわりに塩ゆで枝豆を常備しておくと安心です。
第10位:ゼリー飲料(スポドリ系)(手軽+吸収率)
もう限界…という時に救世主になるのが、スポーツドリンク系のゼリー。
水分・糖分・電解質を一気に摂取でき、体への吸収も早い!
持ち歩きやすく、調理不要な“即食材”として冷蔵庫に常備しておくと重宝します。
厨房現場で「倒れないための」食習慣のコツ
夏の厨房は、まるで低温サウナ状態。
調理中は火の前で汗だく、洗浄では蒸気との戦い。
そんな過酷な環境で「倒れない体」を作るには、食習慣が何より大切です。
まず絶対NGなのが、「朝ごはん抜き」。
これ、本当に命取りです。寝ている間に水分や糖分が抜けているので、朝ごはんを抜くと脱水と低血糖のWパンチをくらうことに。
立ちくらみやフラつきの原因は、ほとんどがここにあります。
「食欲がない…」という朝でも、おにぎり1個と味噌汁くらいはマスト。
特に梅干し入りのおにぎりは、塩分とクエン酸が同時に補給できる厨房の守護神です。
また、仕事中の間食も戦略的に取り入れたいところ。
「ちょっと疲れたな」と感じたときに、ナッツやドライフルーツをつまむだけで、低血糖による集中力低下やめまいを防げます。
ナッツにはビタミンEや良質な脂質、ドライフルーツには天然の糖分とカリウムが含まれていて、体のリズムを自然に整えてくれます。
個包装タイプをポケットに忍ばせておけば、忙しい合間でもすぐにチャージできますよ。
そして、昼食を軽視してはいけません。
「時間がないから…」と早食いや偏ったメニューになりがちですが、主食・主菜・副菜のバランスを意識して、最低でも糖質・たんぱく質・塩分を補える食事を心がけて。
冷やしうどんだけ、サラダだけ、パンだけ──そんなメニューは一見涼しげでも、エネルギー不足で午後にガクッときてしまいます。
もうひとつ大切なのは、水分と一緒にちょっとの塩分をセットで摂ること。
水ばかり飲んでいると、体内のナトリウムが薄まり、かえって熱中症を引き起こす「低ナトリウム血症」になることも。
だから、麦茶+塩飴や、冷たい味噌汁、塩分入りゼリー飲料などが頼れる味方になります。
食べ物以外に効いた「裏ワザ熱中症対策」5選
いくら食事で気をつけても、厨房の猛暑は容赦なし。
「なんとかならんのか…!」という現場の悲鳴に応える、食べ物以外の効いた対策を5つご紹介します。
1. 首に巻くだけ!冷感タオルの即効性
「えっ、それだけ?」と思うかもしれませんが、冷感タオルを首に巻くだけで体感温度が全然違うんです。
動脈のある首元を冷やすことで、体内の熱をスーッと逃がせるので、真夏の厨房でも息がしやすくなります。
最近は水で濡らすだけで冷たさが持続するタイプも多く衛生的に使えるものも豊富。
タオルは作業着の一部と割り切って活用を!
2. 背中にアイスパック!熱中症対策に最適解!
首に巻くタオルもいいのですが、衛生面的に首に巻くことを許されないかも。
そんな時は背中にアイスパック!
これマジでいいですよ。
厨房の責任者には、熱中症対策グッズとして取り入れて欲しいです。
背中を冷やすことが、こんなに気持ちいいとは思わなかったです。
ただ、1日は持たないので予備の保冷パックを用意しておくといいよ。
3. 業務用送風機の「風向き」にこだわる
大型扇風機がある厨房は多いですが、ただ「回してるだけ」では効果半減。
ポイントは空気の通り道をつくること。
熱のこもりやすい壁際やコンロ周りに向けて風を通し、体の前面ではなく「背中側」から風を当てると体温が効率よく逃げていきます。
さらに、送風機の後ろ側に保冷剤入りの発泡スチロール箱を置くと即席クーラーにも!
これ、地味に効きます。
4. 「厨房内でも小休憩」を自分でルール化
熱中症は「気づいたら限界を超えていた」が一番怖い。
だからこそ、こまめな休憩を自分ルールにすることが超重要。
例えば「1時間ごとに水をひと口+深呼吸10秒」など、わずかな時間でも意識してリセットするクセを。
職場で口に出しづらくても、自分の中でルールを決めて動けば倒れるリスクは確実に減ります。
5. タブレット塩分補給は「ポケット常備」で差が出る
水は飲んでるけど、塩分足りてない──厨房あるあるです。
そんなときに便利なのが、タブレットタイプの塩分補給アイテム。
片手でパッと口に入れられるし、熱中症だけでなく、集中力が切れそうなときの気合注入にもなる。
ラムネ感覚で食べられるタイプやクエン酸入りなど味も豊富。
制服のポケットに2〜3個入れておくだけで、だいぶ違います。
6. 「冷やし足湯」で退勤後の熱疲労をリセット
ここが裏ワザ中の裏ワザ。
仕事中にどうしても限界を迎えてしまったときにこそ効くのが退勤後の冷やし足湯。
バケツに冷水をはって、ふくらはぎまで10分浸けるだけで、脚から全身の熱がスーッと引いていきます
翌朝のだるさや頭痛の予防にもなり、「翌日も倒れず働ける体」を作るための超重要メンテナンス。
氷水だと冷たすぎるので、常温の水に保冷剤を入れるくらいがちょうどいいです。
【Q&A】現場のベテラン調理員が答えるリアルな悩み相談
厨房は、体力と気力の勝負。
その中でふと感じる不安や疑問に、現場歴15年以上のベテラン調理員がお答えします。
「知ってるようで知らなかった」実用知識、ここに集約!
Q1:「水だけじゃダメって本当?」
A:本当です。むしろ水だけだと危険な場合も。
汗で出ていくのは水分だけでなく、塩分やミネラルも一緒。それを水だけで補うと、体液のバランスが崩れ「低ナトリウム血症」を起こすリスクがあります。
これは、脱水と似た症状でフラフラになり、最悪の場合は意識を失うことも。
厨房で動き回る日は、水+ナトリウム(=塩分)をセットで補給するのが鉄則。
おすすめは、麦茶+塩タブレットや、スポーツドリンクを少量ずつこまめに飲むスタイル。特に「汗が止まらない日」は要注意です。
Q2:「倒れそうな時に最速で回復するには?」
A:ポイントは「冷やす・横になる・補給する」の3ステップ。
「ヤバい…立ってられない」と思ったら、意地を張らずにすぐに休憩を。
まずは首・脇・足の付け根を冷やすことで体温を下げましょう。冷感タオルや保冷剤をタオルに巻いて使うのが◎。
その後は座るか、可能なら横になって、血流を安定させてください。
意識がしっかりしていれば、塩分入りの飲料やタブレットを少量ずつ摂取。急いで大量に飲むと吐き気につながるので注意。
回復まで無理せず、時間をかけて戻すことが命を守るカギです。
Q3:「若いスタッフが熱中症っぽい時、どう対応すればいい?」
A:まずは焦らず観察、次に即行動。
若手は無理をしがちで、自分から「ツラい」と言い出せないことも。
そんなときは、顔色(青白いor赤すぎる)、ふらつき、反応の鈍さ、汗の量などをしっかり観察。
「あれ?」と感じたら、すぐに声をかけ、無理やりでも休憩に連れて行くのがベストです。
冷却と水分・塩分補給はもちろん、状態が改善しなければ早めに社員や責任者に報告し、医療機関への連絡も視野に入れましょう。
何より大事なのは「倒れる前に気づいて助けること」。
同じ厨房で働く仲間として、予兆を見逃さない目を持つことが、信頼されるベテランの証です。
【実体験】私が熱中症で倒れかけた日とその教訓
あれは、数年前の真夏の厨房。気温は35℃を超え、室温はゆうに40℃超え。
大量の釜を抱えての献立は、揚げ物中心のメニューでした。
「あともう少しで仕込みが終わる」「ここで手を止めたら迷惑かける」。
そんな思いで、水を飲む暇も惜しんで動いていた私に突然のあの瞬間が訪れたのです。
視界が急にグラッと揺れ、身体がフワッと浮いた感覚。
次の瞬間には、先輩が支えてくれて床にしゃがみ込んでいました。
「これは…やばい」
冷や汗は出ているのに体が熱く手足の感覚も鈍い。
たまたま先輩の手が届く範囲にいたから倒れなかったけど、もし近くに誰もいなかったら大惨事でした。
すぐに、首に濡れたタオルを巻かれ少しずつ麦茶を飲ませてもらいました。
横になりながら天井を見つめ「倒れるってこういうことか」と呆然としたのを今でも覚えています。
倒れた原因は明白でした。
▶ 朝ごはんをパン1枚で済ませた
▶ 水分補給を後回しにしていた
▶ 自分だけは大丈夫と過信していた
仕事に穴を空けたくない一心で、自分の体より責任感を優先していたんです。
けれど、それが逆に現場に迷惑をかけてしまう結果になるとは――本当に悔しかった。
それ以来、私は「無理しない勇気」を持つことを自分に許しました。
・朝は梅干し入りおにぎりをしっかり食べる
・30分に1回は必ず水分+塩分を摂る
・「おかしいな」と思ったら誰かに伝える
・若いスタッフにも「水飲んだ?今ちょっと休もう」と声をかける
自分が倒れて分かったんです。
倒れることより倒れないための準備こそが本当の仕事だって。
厨房はハードな現場。
でもだからこそ「元気でいること」こそが最大のチーム貢献。
この経験が、今の私の支え合う姿勢につながっています。
おわりに:命を守る厨房づくりは、自分のケアから
厨房の仕事は、1人ではできません。
調理、盛り付け、配膳、片付け……すべてがチーム戦です。
けれど、どれだけ仲間が優秀でも、自分が倒れてしまったら、その歯車は止まってしまいます。
「自分だけは大丈夫」ではなく、「自分が元気でい続けることが仕事」。
この意識が、厨房を支える第一歩です。
暑さの厳しい夏場、がんばるのは当たり前。
でも、「無理しないこと」も、プロの技術のひとつ。
だからこそ、水分と塩分の補給、食事の工夫、適度な休憩、そして周囲との声かけ――どれか1つでも、今日から意識してみてください。
自分の命を守ることは、仲間の命を守ることにもつながっています。
厨房でがんばるあなたの、その小さな一歩が働く現場全体を変えていきます。
この記事を読み終えた今だからこそ、「できることを1つ」始めてみましょう。